スリッページ(Slippage)

2024年8月15日

執筆者

【執筆】株式会社トリロジー
【登録】財務省近畿財務局長(金商)第372号
【加入】日本投資顧問業協会 会員番号022-00269

スリッページ(Slippage)は、金融取引において、注文を出した際の期待価格と実際に執行された価格の差異を指します。この現象は特にボラティリティが高い市場や流動性が低い状況で発生しやすく、トレーダーにとってはコストやリスクの一部として考慮する必要があります。

スリッページの基本概念

定義
スリッページは、トレーダーが注文を出した価格と実際に取引が成立した価格の差です。この差は通常、マーケットオーダーで発生します。
発生原因
市場のボラティリティ:価格が急速に変動する市場では、注文を出してから執行されるまでの間に価格が大きく動くことがあります。
流動性:流動性が低い市場では、注文を執行できる適切な価格での相手方が見つからないことがあります。
注文のサイズ:大口注文の場合、希望する価格で全ての注文が執行されることが難しく、価格がずれることがあります。
スリッページの種類
ポジティブスリッページ:実際の取引価格が期待価格よりも有利な場合。
ネガティブスリッページ:実際の取引価格が期待価格よりも不利な場合。

スリッページの具体例

外国為替市場の例
トレーダーがEUR/USDを1.1000で買い注文を出したとします。しかし、注文が執行されるまでに価格が1.1002に上昇した場合、スリッページは2ピップス(0.0002)です。
株式市場の例
トレーダーがABC社の株式を50.00ドルで買い注文を出したとします。しかし、注文が執行されるまでに価格が50.05ドルに上昇した場合、スリッページは0.05ドルです。

スリッページの影響

コスト増加
スリッページは実際の取引コストを増加させるため、トレーダーの利益を圧迫する要因となります。
リスク管理
スリッページが大きい場合、リスク管理が難しくなり、特にストップロス注文が意図した価格で執行されないリスクが高まります。
取引戦略の影響
スリッページを考慮に入れた取引戦略を立てることが重要です。頻繁に取引を行う戦略では、スリッページの影響が大きくなるため、注意が必要です。

スリッページの対策

リミット注文の利用
リミット注文を使用することで、希望する価格での取引を保証することができます。ただし、市場価格がリミット価格に達しない場合、取引が成立しないリスクがあります。
市場の流動性を確認
流動性が高い市場や時間帯を選んで取引することで、スリッページを減少させることができます。例えば、主要な市場が開いている時間帯に取引を行うことが推奨されます。
取引量の調整
大口注文を分割して複数回に分けて執行することで、スリッページを抑えることができます。
ボラティリティを避ける
重要な経済指標の発表やニュースリリースの直後はボラティリティが高くなるため、その時間帯を避けて取引することがスリッページを減らすのに有効です。

スリッページの計算方法

スリッページの計算はシンプルです。注文価格と実際の執行価格の差を求め、その値をスリッページとして認識します。

スリッページの計算
スリッページ = 実際の取引価格 -注文価格
例:注文価格が1.1000で実際の取引価格が1.1002の場合:
スリッページ = 1.1002 – 1.1000 = 0.0002 (2 pips)

まとめ

スリッページ(Slippage)は、注文を出した際の期待価格と実際の取引価格の差異を示し、特に市場のボラティリティが高い時や流動性が低い状況で発生しやすい現象です。スリッページは取引コストを増加させ、リスク管理を複雑にする要因となるため、トレーダーはこれを考慮した取引戦略を立てる必要があります。リミット注文の利用や取引量の調整、市場の流動性を確認するなどの対策を講じることで、スリッページの影響を最小限に抑えることが可能です。