COT(コミットメンツ・オブ・トレーダーズ)レポート
【執筆】株式会社トリロジー
【登録】財務省近畿財務局長(金商)第372号
【加入】日本投資顧問業協会 会員番号022-00269
COT(コミットメンツ・オブ・トレーダーズ)レポートは、米国商品先物取引委員会(CFTC: Commodity Futures Trading Commission)が毎週金曜日に公開するレポートで、先物市場における主要トレーダーグループのポジションを示しています。このレポートは、金融市場、特に先物市場やFX市場で取引を行うトレーダーにとって非常に重要なツールです。
COTレポートの概要
一般に知られている従来型のCOTレポートは、先物市場におけるトレーダーのポジションを以下の3つのカテゴリーに分類して報告しています。
- 商業トレーダー (Commercial Traders):
- 通常はヘッジャー(例:農業企業や製造業者)で、市場で価格リスクをヘッジするために先物を取引しています。これらのトレーダーは実際に商品を扱うため、市場の実需に基づいた取引を行っています。
- 非商業トレーダー (Non-Commercial Traders):
- 主に投機家(例:ヘッジファンド、投資ファンドなど)であり、利益を目的として市場に参加しています。彼らは市場動向を予測し、リスクを取ってポジションを構築します。
- 非報告トレーダー (Non-Reportable Traders):
- 個々のポジションが小さいため、CFTCに報告義務のないトレーダー。一般的には個人投資家が該当します。
さらに、CFTCは2013年6月28日、Disaggregated (ディスアグリゲート:細分化型)に新しい4つのグループを導入しました。この変更の主な理由は、先物市場の透明性を高めることでした。 従来の「商業用」と「非商業用」の分類では、取引者の範囲が広すぎ、多様なタイプの市場参加者を十分に把握できないと考えられていました。
細分化型のCOTレポートは、農業、石油・製品、天然ガス・製品、電力、金属、その他の現物商品ごとに分類されています。細分化型のCOTレポートは、報告対象となるOpen Interest(オープン・インタレスト:未決済建玉)を以下の4つに分類して報告しています。
- Producer(生産者/販売者/加工業者/利用者)
- 主に現物の商品の生産、加工、包装、または取扱いに従事し、先物市場を利用してそれらの活動に関連するリスクを管理またはヘッジする事業体を指します。
- Swap Dealer(SD:スワップディーラー)
- 主に商品のスワップ取引を行い、先物市場を利用してそれらのスワップ取引に関連するリスクを管理またはヘッジする事業体を指します。 スワップディーラーの取引相手は、ヘッジファンドのような投機的なトレーダーである場合もあれば、物理的な商品の取引から生じるリスクを管理している従来型の商業顧客である場合もあります。
- Managed Money(マネージド・マネー:投機筋)
- 主に先物市場でヘッジ目的ではなく、利益を追求するために積極的に取引を行う投資家の資金を指します。登録商品取引顧問業者(CTA)、登録商品資金管理業者(CPO)、ヘッジファンド、その他大口投機家を指します。
- Other Reportables(その他報告者)
- 上記3つのカテゴリーのいずれにも該当しない報告対象者は、「その他報告者」に分類されます。多様なグループで、小規模なヘッジファンドやCTA、個人投資家、銀行や証券会社、フロアトレーダーなどです。その活動は多様であり、市場への影響を予測することは難しい場合がありますが、市場全体のポジションの大きな部分を占める場合があり、市場動向を理解する上で重要な要素となります。
金融商品に関しては、CFTCは2016年2月2日にTFFレポート(Traders in Financial Futures)において、新しい4つのグループ分類を開始しました。
以前のCOTレポートにおける「商業トレーダー 」と「非商業トレーダー」の分類は、金融市場の複雑性を反映するには不十分であり、市場の力学を理解する上で制約となっていました。新しい分類は、ヘッジファンド、年金基金、銀行などの異なるタイプの金融機関の役割をより明確に示し、市場分析を深めるのに役立ちます。
COTのTFFレポートには、通貨、米国債、ユーロドル、株式、VIXなどの金融先物が含まれています。そのため、このデータは金融関連のティッカーに限定されています。こちらのレポートでは報告対象となる未決済建玉を以下の4つに分類しています。
- Dealer/Intermediary(ディーラー/仲介業者)
- Asset Manager/Institutional(アセットマネージャー/機関投資家)
- Leveraged Funds/(レバレッジファンド)
- Other Reportables(その他報告対象者)
COTレポートの構造
COTレポートには、各商品の総オープンインタレスト(未決済建玉:OI)、商業トレーダーと非商業トレーダーのロングポジションとショートポジション、そしてそれらのポジションの変化が記載されています。具体的には以下の情報が含まれています:
- Long (ロングポジション): 価格上昇を見込んで買われた契約数。
- Short (ショートポジション): 価格下落を見込んで売られた契約数。
- Spreads: 同じ商品の異なる契約月や異なる商品の間でのポジションの組み合わせ。
COTレポートの利用法
投資家やトレーダーは、COTレポートを次のように活用します:
- 市場の心理を把握:
- 大口投資家(非商業トレーダー)のポジションの動向を把握することで、市場の強気・弱気の心理を理解できます。例えば、非商業トレーダーが大量のロングポジションを保有している場合、上昇トレンドが継続する可能性があると解釈されることがあります。
- 逆張りの参考:
- 非商業トレーダーが極端なポジション(例えばロングポジションが非常に多い)を持っているときは、逆張りの機会として捉えられることがあります。つまり、多くの投機筋が一方向に賭けている場合、トレンドが転換する可能性があるという考えです。
- ポジションの調整:
- COTレポートを参考にしながら、ポジションの調整を行うことで、マーケットのリスクを管理できます。
まとめ
COTレポートは、先物市場やFX市場における投資判断の補助ツールとして広く利用されています。週ごとのデータを分析することで、主要なトレーダーの行動を把握し、市場の流れや転換点を見極めることができます。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません