ADX(Average Directional Index)
執筆者
【執筆】株式会社トリロジー
【登録】財務省近畿財務局長(金商)第372号
【加入】日本投資顧問業協会 会員番号022-00269
ADX(Average Directional Index)は、テクニカル分析においてトレンドの強さを評価するために使用される指標です。J. Welles Wilderによって開発され、DMI(Directional Movement Index)に基づいて計算されます。ADXは、価格がトレンドを形成しているかどうか、そしてそのトレンドがどれほど強いかを判断するのに役立ちます。
ADXの基本構成
- +DI(プラス方向性指数)
- 価格の上昇部分を示す指標で、特定期間内の高値の変動を基に計算されます
- -DI(マイナス方向性指数)
- 価格の下降部分を示す指標で、特定期間内の安値の変動を基に計算されます。
- ADX(Average Directional Index)
- +DIと-DIの値の差を利用して計算され、トレンドの強さを示します。ADXの値が高いほど、トレンドの強さが強いことを示します。
ADXの計算方法
- DM(Directional Movement)の計算
- +DM:
当日の高値と前日の高値の差が、前日の安値と当日の安値の差よりも大きければ、当日の高値 – 前日の高値、それ以外は0。
-DM:
前日の安値と当日の安値の差が、当日の高値と前日の高値の差よりも大きければ、前日の安値 – 当日の安値、それ以外は0。
- TR(True Range)の計算
- TR = 最大値(当日の高値 – 当日の安値、当日の高値 – 前日の終値、前日の終値 – 当日の安値)
- +DIと-DIの計算
- +DI = (14期間の+DMの合計 / 14期間のTRの合計) × 100
-DI = (14期間の-DMの合計 / 14期間のTRの合計) × 100
- DX(Directional Index)の計算
- DX = (| +DI – -DI | / ( +DI + -DI )) × 100
- ADXの計算
- ADXは一定期間(通常14日)のDXの移動平均を取ります。
ADXの解釈
- トレンドの強さの評価
- ADXが20以下:弱いトレンドまたはレンジ相場を示します。
ADXが20〜40:中程度のトレンドを示します。
ADXが40以上:強いトレンドを示します。
- トレンドの方向性
- ADX自体はトレンドの方向を示しません。トレンドの方向を判断するためには、+DIと-DIの値を比較する必要があります。
+DIが-DIを上回っている場合、上昇トレンドを示します。
-DIが+DIを上回っている場合、下降トレンドを示します。
- トレンドの持続性
- ADXが上昇している場合、トレンドが強化されていることを示します。
ADXが下降している場合、トレンドが弱まっていることを示します。
ADXの利点
- トレンドの強さを評価
- ADXは、トレンドの強さを定量的に評価するため、トレーダーがトレンドの持続性を判断するのに役立ちます。
- トレンドフォロー戦略に適合
- ADXは、トレンドフォロー型の戦略に適しており、トレンドの発生や持続性を見極めるのに効果的です。
- 多用途性
- 株式、通貨、先物など、さまざまな市場で利用できる汎用的な指標です。
ADXのデメリット
- ラグ効果
- ADXは過去の価格データに基づいて計算されるため、トレンドの変化に対する反応が遅れることがあります。
- トレンドの方向を示さない
- ADXはトレンドの強さを示すだけで、トレンドの方向を示しません。+DIと-DIの値を別途確認する必要があります。
- レンジ相場での精度低下
- トレンドが明確でないレンジ相場では、ADXの信頼性が低下し、誤ったシグナルを生成することがあります。
ADXの具体例
- 例1:強い上昇トレンド
- 状況:株価が上昇トレンドにあり、+DIが-DIを上回っている。ADXの値が40以上で上昇している。
解釈:この状況は強い上昇トレンドを示し、買いポジションを維持することが推奨されます。
- 例2:弱いトレンドまたはレンジ相場
- 状況:株価がレンジ相場にあり、+DIと-DIが頻繁に交差している。ADXの値が20以下で推移している。
解釈:この状況はトレンドが弱いか、レンジ相場であることを示し、トレードのエントリーポイントを慎重に見極める必要があります。
まとめ
ADX(Average Directional Index)は、トレンドの強さを評価するための有効なテクニカル指標です。トレンドの強さを定量的に評価し、トレンドフォロー型の戦略に適しています。ADXの値が高いほど、トレンドの強さが強いことを示し、低い値はトレンドが弱いか、レンジ相場であることを示します。しかし、ADXはトレンドの方向を示さないため、+DIと-DIの値を併用してトレンドの方向を判断する必要があります。他のテクニカル指標と併用することで、より信頼性の高いトレード戦略を構築することが可能です。
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