全額信託保全について
執筆者
【執筆】株式会社トリロジー
【登録】財務省近畿財務局長(金商)第372号
【加入】日本投資顧問業協会 会員番号022-00269
日本国内のFX口座における全額信託保全について、解説します。
信託保全の概要
信託保全とは、FX会社が顧客から預かった資産を自社の財産と完全に分離し、信託銀行や信託業務の認可を受けた銀行に分別保管する仕組みです。この制度は2009年8月に施行された金融商品取引業等に関する内閣府令の改正により義務化されました。
信託保全の対象
信託保全の対象となるのは、FX口座に預けているすべての資産です。具体的には以下のものが含まれます。
- 預託された証拠金
- 実現損益
- 未実現損益
- スワップ損益
- 未払い手数料と出金予定額を差し引いた額
外貨で預託された証拠金も円換算されて信託保全の対象となります。
信託保全のプロセス
- FX会社は毎営業日終了時点で信託保全の対象金額を計算します。
- 必要な金額を確定後、翌営業日に信託口座へ預託します。
- 多くのFX会社は、顧客への必要返還金額を上回る額を常に信託口座内に維持しています。
信託保全の利点
- 破綻時の資産保護:
- FX会社が破綻した場合でも、顧客の資産は原則として全額、受益者代理人を通じて返還されます。
- 分別管理:
- 顧客の資産はFX会社の財産とは完全に分離されて管理されます。
- 二重の保護:
- 信託を受けた金融機関も、信託法により信託資産と自身の財産を分別管理することが義務付けられています。
注意点
- 信託保全は取引の元本を保証するものではありません。
- 為替変動による損失は保証されません。
- FX会社の過誤、システム障害、急激な相場変動などにより、適切に信託されなかった場合、証拠金が保全されないことがあります。
- 返還される額は口座清算価値の金額となります。
海外FXとの違い
日本国内のFX会社は全て信託保全が義務付けられていますが、海外FX会社では義務化されていません。海外FX会社の多くは「分別管理」で資金を管理しているとされています。しかし、実態が不透明な場合もよくあります。これが海外FX詐欺の温床になっており、意図的に会社を倒産させ、顧客資金を持ち逃げするという詐欺事件が発生しています。
まとめ
日本国内のFX口座における全額信託保全は、顧客の資産を守るための重要な仕組みです。FX会社の破綻リスクから顧客の資産を保護し、安全な取引環境を提供することを目的としています。これは海外FXとの大きな違いです。
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