期待効果理論(Expected Utility Theory)

期待効用理論(Expected Utility Theory)は、経済学や決定理論の分野で、リスクが関係する意思決定において、個人がどのように選択を行うかを説明する古典的な理論です。この理論は、ノーベル賞を受賞した経済学者ジョン・フォン・ノイマン(John von Neumann)とオスカー・モルゲンシュテルン(Oskar Morgenstern)が1944年に提唱したものです。期待効用理論は、合理的な意思決定者が、さまざまな不確実な選択肢のうち、最大の効用(utility)を期待できるものを選ぶと仮定します。

基本的な前提

期待効用理論は、以下の前提に基づいています。

効用の最大化
人々は、財やサービスから得られる満足度、すなわち「効用」を最大化するように行動します。リスクが関係する選択肢が提示された場合、個人は各選択肢の結果に対する効用を考慮し、その選択肢の期待効用を計算します。
期待値の計算
期待効用は、各結果が発生する確率と、その結果に対する効用を掛け合わせ、その総和を取ることで計算されます。期待効用の計算式は次の通りです。
E(U) = p1U(x1) + p2U(x2) + … + pnU(xn)
ここで、pi は各結果 xi の発生確率、U(xi) はその結果に対する効用です。
合理性の仮定:
期待効用理論では、意思決定者は一貫して合理的に行動し、与えられた情報に基づいて最大の期待効用を追求するものと仮定されます。この「合理性」の仮定は、すべての選択肢について同じ基準で評価し、矛盾のない選好(preferences)を持つことを意味します。

効用関数

期待効用理論では、個人の効用関数(utility function)に基づいて意思決定が行われます。この効用関数は、個人のリスクに対する態度を反映します。リスクに対する態度は以下の3種類に分類されます。

リスク回避的(Risk Averse):
個人がリスクを避け、確実な結果を好む場合。リスク回避者の効用関数は、凸型をしています。つまり、同じ額の増加に対して効用の増加は次第に小さくなります。例えば、100ドルの増加は、1000ドルを持っている人よりも、10ドルしか持っていない人にとって大きな価値があります。
リスク中立的(Risk Neutral):
個人がリスクに対して中立で、期待値のみに基づいて判断する場合。リスク中立者の効用関数は、直線的です。100ドルの増加が、どの時点でも同じ価値を持ちます。
リスク追求的(Risk Seeking):
個人がリスクを好み、より不確実な結果を選ぶ場合。リスク追求者の効用関数は、凹型をしています。彼らは、より高いリスクに対しても、期待値以上の効用を見出します。

期待効用理論の応用例

保険の購入:
リスク回避的な人は、将来の損失のリスクを避けるために保険を購入します。保険にかける費用(保険料)は、保険を買わない場合の不確実なリスクよりも、確実な損失として小さく感じるためです。
投資判断:
投資家は、期待されるリターンとリスクを比較し、リスクに対して許容できる期待効用を基に投資先を決定します。リスク回避的な投資家は、安全な資産に投資することを好むのに対し、リスク追求的な投資家は、ハイリスクハイリターンの資産を選ぶ可能性があります。

期待効用理論の限界

期待効用理論は合理的な意思決定を前提としていますが、実際の人間の意思決定行動は、必ずしも合理的でないことが指摘されています。その一例が、プロスペクト理論です。プロスペクト理論は、期待効用理論に対して、損失を強く回避するなど、感情や認知バイアスが意思決定に与える影響を説明します。

例:損失回避バイアス:
期待効用理論では、100ドルの利益と100ドルの損失が同等に評価されるはずですが、実際には人々は100ドルを失うことに対して、100ドルを得ることよりも強く反応します。このような非合理的な行動は、プロスペクト理論で説明されます。

まとめ

期待効用理論は、リスクを伴う意思決定の合理的なモデルを提供し、効用の最大化という行動原則に基づいています。この理論は、経済学や金融におけるリスク管理、投資行動の理解に役立ちます。しかし、現実の人間行動には認知バイアスや感情的要素が強く影響するため、これらを考慮に入れる必要があることが指摘されており、その補完としてプロスペクト理論などが登場しています。

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