オンショア人民元(CNY)

2024年8月15日

執筆者

【執筆】株式会社トリロジー
【登録】財務省近畿財務局長(金商)第372号
【加入】日本投資顧問業協会 会員番号022-00269

オンショア人民元(CNY)は、中国本土内で取引される中国人民元を指します。オンショア市場は、中国政府の厳しい資本規制と管理下にあり、主に国内取引に利用されます。オンショア人民元は、オフショア人民元(CNH)と対照的に、中国人民銀行(PBOC)による政策と管理の影響を強く受けます。

オンショア人民元(CNY)の基本概念

定義
オンショア人民元(CNY)は、中国本土内で取引される人民元です。中国人民銀行(PBOC)によって管理され、資本規制が適用されます。
管理フロート制
中国人民元は、管理フロート制(Managed Float)を採用しています。これは、為替レートが市場の需要と供給によって決定される一方で、中国人民銀行が介入して適切なレートを維持する制度です。
為替レートの設定
中国人民銀行は、毎日人民元の基準値(Reference Rate)を設定し、人民元の取引範囲を管理します。取引範囲は基準値の上下2%と定められています。

オンショア人民元(CNY)の特徴

資本規制
中国本土内での資本取引は厳しく規制されています。外貨の流出入は中国人民銀行の監督下で管理され、資本の自由な移動は制限されています。
政策の影響
オンショア人民元の為替レートは、中国政府の政策や中国人民銀行の介入に強く影響されます。政府は為替レートの安定と経済成長を目的として、積極的に市場に介入します。
市場の区分
オンショア市場は、中国国内の金融機関や企業、個人が主に取引する市場です。これは、オフショア市場(香港などで取引されるCNH)とは異なります。

オンショア人民元の利点とデメリット

利点:

安定性
中国人民銀行の介入により、為替レートの急激な変動が抑えられ、相対的に安定した為替レートが維持されます。
政策支援
中国政府の政策支援により、為替レートの適正な水準が維持され、輸出入企業にとって予測可能性が高まります。

デメリット:

自由度の欠如
資本規制が厳しく、資本の自由な移動が制限されるため、国際取引や投資において柔軟性が欠ける場合があります。
市場介入リスク
中国人民銀行の介入により、市場の需要と供給による自然な為替レート形成が妨げられることがあります。
二重市場構造
オンショア人民元(CNY)とオフショア人民元(CNH)の為替レートが異なる場合があり、投資家や企業にとって為替リスクが発生することがあります。

オンショア人民元の取引の具体例

貿易取引
中国国内企業が輸出入取引を行う際、オンショア人民元(CNY)を使用します。輸出企業は人民元を受け取り、輸入企業は人民元で支払います。
金融取引
中国本土の金融機関が人民元建ての貸付や預金、債券取引を行う際に、オンショア人民元を使用します。これにより、国内の資金流動性が維持されます。
投資
中国国内の投資家や企業が不動産や株式、その他の資産に投資する際にオンショア人民元を使用します。これにより、国内市場への資本投入が促進されます。

オンショア人民元とオフショア人民元の違い

規制の違い
オンショア人民元(CNY)は中国本土内で取引され、厳しい資本規制と管理が適用されます。一方、オフショア人民元(CNH)は中国本土外(主に香港)で取引され、資本規制が緩和されています。
為替レートの設定
オンショア人民元の為替レートは中国人民銀行の管理フロート制の下で設定され、基準値と取引範囲が規定されています。オフショア人民元の為替レートは市場の需給バランスによって決定されます。
流動性
オンショア人民元市場は中国国内の取引に限定されるため、流動性は国内要因に依存します。オフショア人民元市場は国際的な取引が行われるため、流動性が高くなります。

まとめ

オンショア人民元(CNY)は、中国本土内で取引される人民元であり、中国人民銀行の厳しい管理と資本規制の下で運営されています。オンショア人民元の特徴には、安定した為替レートと政策支援がありますが、資本の自由な移動が制限されるため、国際取引や投資において柔軟性が欠ける場合があります。オンショア人民元を理解し、その特性を活用することで、中国国内市場での取引や投資の戦略を効果的に構築することができます。

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