バックワーデーション(Backwardation)

2024年9月19日

執筆者

【執筆】株式会社トリロジー
【登録】財務省近畿財務局長(金商)第372号
【加入】日本投資顧問業協会 会員番号022-00269

バックワーデーション(Backwardation)は、先物取引市場における価格構造の一つで、将来の先物価格が現在のスポット価格(現物価格)よりも低い状態を指します。これは、通常、商品市場や原油市場で見られる現象です。バックワーデーションは、先物市場の一形態である「先物価格カーブ」の逆転現象を示しています。

バックワーデーションの基本概念

スポット価格と先物価格:
スポット価格は、即時に商品の受け渡しが行われる価格です。これに対し、先物価格は、将来の特定の時点に商品を受け渡す契約に基づく価格です。
バックワーデーションの状態:
バックワーデーションは、将来の先物価格が現在のスポット価格よりも低い場合に発生します。通常、先物価格はスポット価格に対して時間が経つにつれて上昇する(コンタンゴと呼ばれる状態)と考えられていますが、特定の市場状況下では逆転が起こり、先物価格がスポット価格を下回ることがあります。

バックワーデーションが発生する要因

供給不足の懸念:
商品の供給が不足すると予想される場合、即座に商品を確保したいという需要が高まり、スポット価格が上昇します。この結果、将来の供給が改善されることを期待して、先物価格はスポット価格を下回ることがあります。
保管コストの低下:
商品を保管するコストが高い場合、将来にわたって商品を保有することが不利になります。これにより、近い将来の価格が高く、遠い将来の価格が低くなるバックワーデーションが発生します。
リスクプレミアム:
投資家が、現時点での価格変動リスクを回避するために、将来の価格が現在より低く設定される場合があります。このリスクプレミアムがバックワーデーションを引き起こす要因となります。

バックワーデーションの影響

投資戦略への影響:
バックワーデーションの状態では、投資家が先物契約をロールオーバー(次の期日まで持ち越す)する際に利益を得る可能性があります。これは、将来の先物価格が低いため、安価に次の先物契約を購入し、スポット価格との差で利益を得られる可能性があるからです。
市場心理:
バックワーデーションは、市場参加者が即時の供給不足や価格上昇の可能性を強く意識していることを示しています。市場が不安定な状況にあるときや、将来の供給が不確実なときにバックワーデーションが発生しやすいです。

バックワーデーションとコンタンゴの違い

バックワーデーション:
将来の先物価格が現在のスポット価格を下回る状態。
商品の即時の需要が強い、または将来の供給が改善されると期待される場合に発生。
コンタンゴ(Contango):
将来の先物価格が現在のスポット価格を上回る状態。
将来のコストが高くなることを見越した市場や、商品を保有するコストが大きい場合に発生。

まとめ

バックワーデーションは、商品市場や原油市場などでしばしば見られる特殊な市場状況です。この現象が発生する背景には、供給不足やリスクプレミアム、保管コストの影響などが絡んでおり、市場参加者にとって重要な指標となります。投資家はバックワーデーションを理解し、その市場状況に応じた投資戦略を採用することが求められます。

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