サーム・ルール不況指数
サーム・ルール不況指数（Sahm Rule Recession Indicator）は、アメリカの経済学者クラウディア・サーム（Claudia Sahm）によって開発された、アメリカ経済が不況に陥ったかどうかを迅速に判断するための経済指標です。この指数は、労働市場の悪化を迅速に検出するために設計され、景気後退を早期に把握できるツールとして使用されています。
サーム・ルールの定義と計算方法
サーム・ルールは、次のように定義されます。
- サーム・ルールの定義
- 失業率が過去12か月間の最低水準から0.50%以上上昇した場合、景気後退が始まった可能性が高いと判断します。
具体的には、以下のステップで計算されます。
- 直近の失業率（Unemployment Rate）を取得します。
- 直近12か月間の失業率の最低値を見つけます。
- 直近の失業率がその最低値から0.50%ポイント以上上昇した場合、景気後退が
- 始まったとする。
サーム・ルールの特徴
- 迅速な景気後退の検出:
- サーム・ルールは、景気後退が公式に宣言される前に、比較的早い段階で不況の可能性を察知することができます。特に、失業率の変化を基にしているため、労働市場の状況が悪化し始めた時点で警告を発します。
- 単純かつ実用的なルール:
- サーム・ルールは、そのシンプルな計算式によって広く使いやすいものになっています。複雑な経済指標に比べ、過去12か月間の失業率データを使って即座に判断できるため、経済の専門家だけでなく一般的な経済の観察者にも利用されています。
- 過去の不況を正確に検出:
- 過去のデータに基づく検証では、サーム・ルールはアメリカの景気後退を高い精度で検出してきたとされています。リーマンショックを含む数回の不況においても、この指標が有効だったとされています。
サーム・ルールの背景と目的
サーム・ルールは、アメリカの公式な不況判定機関である全米経済研究所（NBER）の公式宣言がしばしば遅れることが多いため、より迅速に景気後退を検出する手段として開発されました。NBERは不況を後になって認定するため、政策立案者や投資家が迅速に対応できる指標が求められていました。サーム・ルールはこのニーズに応えるものとして、経済政策を支援する目的で使用されています。
サーム・ルールの限界
- 失業率だけに基づくため、他の経済指標を無視する
- サーム・ルールは失業率のみを基にしているため、他の重要な経済指標（GDP成長率、インフレ率、消費者信頼感など）を考慮していません。したがって、失業率が一時的に変動した場合や、その他の指標が悪化していない状況でも、景気後退のシグナルを誤って出す可能性があります。
- 後追い指標になる場合もある
- 失業率が上昇するタイミングによっては、景気後退が既に深刻化した後にシグナルを出すこともあり、完全に先行指標とは言えません。
まとめ
サーム・ルール不況指数は、失業率の動向に基づいて、経済の悪化を早期に察知するためのシンプルで効果的なツールです。アメリカの景気後退を迅速に捉え、経済政策の立案や市場の警戒感を高めるために使用されてきましたが、失業率以外の要素も考慮する必要がある点に注意が必要です。